カナダ財務省より発表から数週間単位の非常に短い猶予期間しか与えられなかった新しいモーゲージ(住宅ローン)のルールが10月17日より施行されることとなりました。
頭金20%未満で融資を受ける住宅ローンをHigh Ratio Mortgageと呼びますが、この審査基準に利用される金利が今までは一般的に提供されるDiscount Rate(現在は約2.6%程度、金融機関による)を用いて融資限度額が算出されましたが本日以降はカナダ中央銀行の設定する政策金利(現在4.6%)を用いる、結果として融資限度額が最大20%以上下回ることとなり全国的に不動産取引を抑制するそれなりのインパクトがあることが予想されます。
Background
原油価格の暴落は震源地であるアルバータ州では景気・不動産市場の低迷を招きましたが、その副産物であるカナダドル安の恩恵を受けたバンクーバーやトロント不動産市場では前年比20%以上の不動産価格上昇を見るほど過熱しました。安いカナダドルを背景に海外からの投資マネーが流入したことが原因ですがそれらの都市の在住者の購入能力を奪い将来の価格調整に不安を残すところとなりました。これを是正すべく打ち上げられた緊急対策ですがすでに低迷しているアルバータ州を顧みない政策です。
疑問点
急遽導入されたこの政策は金融機関で議論がなされている段階で、当初High Ratio Mortgageのみに適用されると解釈されがちでしたが頭金20%以上の住宅ローン(Conventional Mortgage)にも適用される可能性がある含みを持ちます。大手金融機関は今後態度を表明することとなりますがその内容次第に於いては想定よりも多くの不動産購入希望者の購入能力を削ぐことにもなりかねず、引き続き注視する必要があります。
現状
10月ここまでのアルバータ不動産市場は戸建て部門の販売は前年度を10%以上上回る結果を示していますが少なからず駆け込み需要があることが否めずこの政策の影響を図ることは難しいと言わざるを得ません。17日までに融資の確約を得た不動産売買契約が大方片つくまでの年内いっぱいまではその影響力を正確に反映したデータは出てこないものと思われます。
アパートメントスタイルの集合住宅部門は理想とされる3か月分の在庫量を大幅に上回る6か月分となっており未だ新築物件の生産調整がついていないことから短期的な回復は見通しが立たない状況にあります。
今回の政策はアルバータの不動産市場には低迷に追い打ちを掛ける感が否めませんが、まだまだ議論がなされていないこともあり例外規定が出てくる可能性も無きにしもあらずです。判断材料に乏しい事もありしばらくは政策の行方を注視する必要があります。